藤沢教会|立証 & デューク大学神学部夏期講習『和解』紹介のスライド

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 印刷用PDFA4版
 2009年8月9日 聖霊降臨節主日 (平和月間)
立証 佐藤 容子 姉

 聖書朗読

 『神は、キリストを通してわたしたちを御自分
 と和解させ、また、和解のために奉仕する任務
 をわたしたちにお授けになりました。』

      コリントの信徒への手紙二 5章18節
注)グリーンのTシャツは、今日のためにわざわざ着てこられた記念の品
   『和解センターのオリジナルTシャツ』
  です。
  表には、got conflict? (争っているの?)、
  裏にはpass the peace(平和を手渡そう) と書かれています。

講習を受けるまで 夏期講習の特徴  和解とは
賜物、そして奉仕 祈り 

講習を受けるまで
私は、5/31から6/5まで、アメリカ中東部にあるデューク大学神学部にて、「和解」をテーマにした夏期講習を受講致しました。証の前半では、神様に導かれて講習をうけるまでに至ったこと、そして後半では、講習での学び、交わりについて証を致します。

私は、昨年8月よりハワイ大学音楽学部に所属し、作曲の学びをしています。普段は、様々な専攻の大学院生と一緒に寮生活をしています。そのような中、去年12月、寮のキッチンで知り合った友人が、これから働きに行く先のノースカロライナ州について面白い話をしてくれました。ノースカロライナとは、その友人にとっては、 自然が非常に豊かであっても目立った芸術文化施設がなく、長期間住むには、少々退屈な場所との話でした。落胆している友人を横目に、 私は 冗談半分でノースカロライナ州 のことをインターネットで調べてみました。どうやら本当に、ノースカロライナは大きな森や自然公園が集中している地域、しかし加えて、デューク大学などをはじめとする、様々な医療の研究機関が集まる、リサーチトライアングルといわれる特別な研究地域であることがわかりました。ところで、私が出席させて頂いている水曜コイノニアで取り上げられた最初のテキストは、ウィリモン著「洗礼」でした。著者は、もとデューク大学神学部教授、そして訳者の平野克己先生もデューク大学神学部に1年間、留学されていることが、私の記憶のどこかにあったようです。気がつけば、デューク大学神学部 のホームページにたどりついていました。そして、今回の夏期講習の案内が、目に飛び込んできました。

私は、この講習をうけてみようかと思いたちました。なぜなら、音楽と神学との関係について興味深い研究されている先生が、今回の講習に関わっておられるからでした。しかし、様々な思いも同時にこみあげてきました。新しい事に一歩を踏み出すことが苦手な私は、講習を受けない理由を見つけ出そうとしました。そのような中、講習料や旅費など経済的な必要は、神様によって、すべて満たされました。けれども私は、さらに迷い続けました。英語の聖書を持っておらず読むのに全く慣れていない、ということで思いわずらい 、やはり受講する事をやめようと再び思ったのです。そう心の中でつぶやいた、その日の午前のことです。自分のオフィスがあるビルに行きますと、ひとつの机に「ご自由にお持ちください」という張り紙のもと、英語の聖書が1冊、置かれていたのです。私は、神様が私の微妙な心の動きもすべてお見通しであることを確信し、様々な言い訳を心の中で繰り返したことが怖くさえなりました。その日の午後、私は夏期講習を受ける決心をしました。講習申し込みの最終日でした。

ホノルルから目的地であるノースカロライナまでは、アトランタを経由しました。アトランタ空港に降り立った時、まず目に入ったものが、ガラスケースに納められたマルチン•ルーサー•キング牧師のスーツ、眼鏡、ラジオなどの展示でした。バイブルベルトと言われる、クリスチャン層の厚い地に降り立ったことに勇気と安堵感を与えられました。アトランタから1時間のフライトで、ノースカロライナのダーラム国際空港に到着しました。空港からデューク大学のある街ダーラムへ向かう道は••••• 友人が言っていたように、本当に森しかありませんでした。

夏期講習の特徴
さて、講習の話に移ります。この夏期講習は、デューク大学神学部内にありますCenter of Reconciliation 「和解センター」の主催で行われました。このセンターのミッションの中心となっているのは、先ほどお読みしました、コリント信徒への手紙2の5章18節にあります、「神は、キリストを通してわたしたちを御自分と和解させ、また、和解のために奉仕する任務をわたしたちにお授けになりました。」というみことばです。アフリカ、ルワンダをはじめとする民族間における様々な問題など、これまで教会が、あまり積極的に関わってこなかったと思われる「和解」に集中して、センターは取り組んでいます。具体的な働きとしては、1)和解というミッションを担う教会のリーダーを育てること、2)神学を基本としたキリスト者にとっての和解の理解、和解についての知恵、和解を通しての希望を求め、深めること、3)和解の営みに携わっている牧師、教会のリーダー、会衆同士のつながりを深めること、です。和解センターでは、神様が与えてくださるストーリー、「旅路」として和解というものを捉え、平和学とは一線を画しています。

この講習でのキーワードのひとつをご紹介します。和解センターのディレクター、クリス•ライス氏の言葉です。

「和解とは、あなたの隣人の中で、愛することが難しい人を愛すること、それにまさるものではない。」
“Reconciliation is never bigger than the person near to you who is difficult to love.”

講習の1日目は、ペンテコステでした。ペンテコステの日にふさわしく、全米各地、アフリカ、セルビア、イギリスなど様々な国と地域から、また様々なキリスト教派の人々が集まりました。講習の始まりは、賛美、そして食事でした。実は、全行程で食事を共にすることが大変、重要視されていました。これは、一緒に食事をすることにより、相手を知り、お互いの話を聞き合い、励まし合い、そして食べ物を下さる神様を思うという「学び」の為でありました。 もちろん、プログラムの最後も食事の場で締めくくられました。私は食事の大切な時間を通じて、他の信仰者と多くのことを学び合い、励まし合う機会を与えられました。

さて、2日目以降のプログラムでは、朝8:30から礼拝、午前は大教室でのレクチャー、昼食をはさんで、午後からは小さなグループに分かれての学び、そして午後5:30から夕礼拝、夕食、その後さらに夜のプログラムが午後9時まで続きました。朝、夕の礼拝において私が感じたことは、3つの自由でした。すなわち、キリストの内における自由、賛美を許されている自由、賛美のために自分を表現する自由でした。様々な教会の伝統、教派の人々が集う中、賛美において表現する自由、その賛美の多様さを主がお許しくださっている、という素晴らしい経験をしました。即座に、聖歌隊が結成されました。説教のあとでは、どこからともなく、賛美の歌声がたちのぼり、ハーモニーとなって、深い祈りへとつながっていったこともあります。
和解とは
次に、実際にレクチャーで学んだことを、テキストをもとに御紹介致します。

- 和解は、神から世界への賜物である。この世の破れを癒すのは、私たちの間から始まるものではない。また私たちの行動によって始まるのでもない。それは、神様と神様の新しい創造の業という賜物によって始まる。

- 和解とは、理論でもなく、達成するべきことでもなく、テクニックでも、イベントでもない。それは、旅である。聖書が和解のミニストリーの中心である。聖書のユニークな物語無くして、和解の旅路における様々な課題に生きるために必要な想像力を養うことはできない。

- 和解の旅路は、神と人との友情関係が新しい未来へむかうための、変化を伴う旅路である。

- 和解の旅路は、哀しみの鍛錬を求める。哀しむことは、私たちに、この世の破れの深さだけではなく、自分自身また、教会の中の破れに、目を向けることを教える。加えて哀しみは、真実、会話、ゆるしによる、旅としての和解を形作る。

- 破れのある世界において、神はいつも希望の種をまいて下さっている。種は、いつも私たちが期待する所、欲する所にまかれるわけではない。和解は、いつも希望を求める。希望をもつ能力というものは、訓練によって得られる。和解の旅路は、希望のサイン(兆候)を見ることであり、希望を具体的に示すことを学ぶ必要がある。苦しみのある現実の中で、希望溢れる忍耐によって生きる訓練も必要である。

- 覚える事なくして、和解はない。過去の痛み、そしてゆるしへの招きに、真剣に向かい合うことなく、平和な明日にむけて、希望を抱くことはできない。

- 和解には、教会が必要である。和解とは、エキスパートによる伝道活動ではない。和解とは、キリストの内にあるすべての人に与えられた神からの賜物である。教会の使命とは、この世の分裂、暴力を休止することである。教会は、神の新しい創造による平和を示す、今まさに行われつつある聖霊の働きに参加する。

- 和解の働きには、特徴的なタイプのリーダーシップが求められる。

- 対話なくしての和解はない。対話とは、新しい人々と新しい献身的な愛の未来に向かって、神と共に旅を続けることである。

- 想像力と対話は、和解における最も中心的な事柄である。和解とは、新しい想像力によって生きることを身につけることである。

  参照:Emmanuel Katongole, Chris Rice共著
      「Reconciling All Things」
      Inter Varsity Press, 2008. 157p.
賜物、そして奉仕
最後になりましたが、私が講習の参加者との交わりの中で経験したことを証したいと思います。
それは「賜物」についてです。私は、今回の経験を通して、深く気づかされることがありました。食事のとき、私はある女性の向かいに座りました。色々とおしゃべりしていくうちに、彼女は、音楽大学のハープ科を卒業していると話して下さいました。
しかし今は、音楽の仕事ではなく、事務関係の仕事についており、しばらく音楽の現場から遠のいているとのことでした。私は、彼女の話を聞いて、特別な感動を覚えることはありませんでした。しかし、その2日後の礼拝で、彼女は音楽奉仕者として用いられ、ハープを演奏していたのです。後で聞いてみれば、彼女がハープを学んだ経験があると知った誰かが、 ハープをもっている隣人を思いだし、その人からハープを借り、神学部の礼拝堂まで運んできたというのです。この出来事に、和解センターのスタッフも、どうしてハープが神学部にあるのか?と非常に驚いていました。私は、このように神様がなして下さるみ業を通して、隣人の賜物を信仰の目でとらえていく大切さを知りました。そして隣人の賜物を知ったとき、その賜物が、ふたたび神様への捧げものとして用いられるよう、どのような配慮、時として、どのような行動力が必要なのか、気づかされたのです。

このような神様のみ業を、そして信仰の先輩方の大胆とも言うべき行いを、講習の期間中、何度も経験致しました。「主は生きておられる」というみことばが、何度も心の中に響きました。人と人との出会いの中に、新しい創造のみ業を与えて下さる神様に感謝致します。
祈り
主よ、私たちの思いをはるかに超えた所から、私たちをとらえて下さり、導いて下さり、あなたのご栄光を仰ぎみる時を常に与えて下さることを感謝いたします。隣人について思いを巡らします。私にとって、愛することがむずかしい人は、誰でしょうか?どうぞ、愛することが難しい人々のために、和解の祈りをささげることができますように。私の中にあふれる、様々な感情、あきらめ、怒り、悲しみ、不快感、恐れ、拒絶、無関心から離れ、主があたえて下さるみ言葉によって、その人のために祈りの言葉を口にすることができますように。そして、その方と共に、和解の食卓の席につく機会を与えてください。隣人の多様性を愛し、受け入れることができますように。隣人の賜物に、今、信仰の目を向けさせてください。主からお預かりしている賜物が、教会の内外で生かされ、主のご栄光のために用いて頂けますように、隣人として細やかな配慮ができますよう、知恵と勇気をさずけてください。主から与えられる平和を、隣り人に渡して行く務めをはたさせてください。
アーメン。

<リンク>
夏期講習でのスピーチをダウンロードすることができます。
http://www.divinity.duke.edu/learningforlife/programs/summerinstitute/materials

夏期講習のブログです。シラバスもご覧頂けます。
http://dukesummerinstitute.blogspot.com/

和解センターのHP
http://www.divinity.duke.edu/reconciliation/index.html

デューク大学神学部のHP
http://www.divinity.duke.edu/
<講習で取り上げられた参考図書>
Begbie, Jeremy. Resounding Truth: Christian Wisdom in the World of Music. Baker
Academic, 2007. 416p.

Hauerwas, Stanley and Jean Vanier. Living Gently in a Violent World. InterVarsity Press,
2008. 115p.

Jones, Gregory. Embodying Forgiveness: A Theological Analysis. Wm. B. Eerdmans
Publishing Company, 1995. 332p.

Katongole, Emmanuel and Chris Rice. Reconciling All Things. InterVarsity Press, 2008.
157p.

Marsh, Charles. The Beloved Community: How Faith Shapes Social Justice from the
Civil Rights Movement to Today. Basic Books, 2006. 320p.

Perkins, Johnson and others. Linking Arms, Linking Lives: How Urban-Suburban
Partnerships Can Transform Communities. Baker Books, 2008. 240p.

Perkins, Spencer and Chris Rice. More Than Equals: Racial Healing for the Sake of the
Gospel. InterVarsity Press, 2000. 285p.

Rice, Chris. Grace Matters: A Memoir of Faith, Friendship, and Hope in the Heart of the
South. Jossey-Bass, 2003. 336p.

Wilson-Hartgrove, Jonathan. Free to Be Bound: Church Beyond the Color Line.
NavPress, 208p.


デューク大学神学部 夏期講習 テーマ『和解』 の紹介
スライド映写

デューク(Duke)大学構内

デュークチャペル

デュークチャペルの内部

デューク大学神学部の Goodson Chapel

レクチャーの様子

ダーラム地域の教会:Blacknall Church その1

ダーラム地域の教会:Blacknall Church その2

夏期講習会参加者の集合写真

参加者のひとり、Dr.Dearbornさんと
 
Thank You!
 

更新:2009.8.14 by K.T